最高裁判所第一小法廷 昭和38年(あ)2476号 決定 1964年4月09日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人辻冨太郎の上告趣意第一点について。
所論は単なる訴訟違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(原判決の支持する第一審判決判示第四の脅迫の事実によると被害者たるバー経営者鷲山美智子に対し「……どうせ俺も近く刑務所に行くが、行くついでに店をたたきめいでやる、こんな店をめいでも三ケ月位しか行きやせん。俺達にさからうと河合の店のようにつぶれるぞ」などと怒鳴りつけたというのであるから、被害者の財産または営業の自由が脅迫の対象法益であること判文上自ら明らかである。)
同第二点について。
所論は違憲をいうが、実質は単なる法令違反(訴訟法違反をふくむ)の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(所論は、逮捕状によつて逮捕された被疑者は逮捕状に引致すべき官公署として記載されている警察署以外の警察署に押送拘置されることを受認すべき義務はないのであるから、かかる違法な押送拘置の措置に抵抗しても公務執行妨害罪は成立しないと主張するものであるが、刑訴二〇九条によつて準用される同七五条によると逮捕状の執行によつて引致された被疑者を、必要ある場合には、監獄に留置することができ、かつ監獄法一条三項によると警察官署に附属する留置場は監獄に代用できるのであるから、逮捕状の執行によつて引致された被疑者を、留置の必要ある場合に、他の警察署の代用監獄に押送拘置することは違法な措置ではない。)
同第三点について。
所論も違憲をいうが、実質は量刑不当の主張をいでないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
よつて、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する(裁判長裁判官斎藤朔郎 裁判官入江俊郎 長部謹吾 松田二郎)